ホッとグレフルジンジャーを飲みに

こんばんは。 ナツパールです。

いよいよ12月に入り、あっという間に今年も終わりそうな予感。

今日は、ケシパールで先日から始まった
ドリンク冬メニューについて書きたいと思います!


 

今年の新作は何と言っても「ホッとグレフルジンジャー」!

私ナツパールの、お気に入りの新作となりました。
(本当は基本的に全部お気に入りです。笑)


カフェケシパール_スキャン 18

 

 

今回はいつもと違って、自分の中で、

「こういうドリンク」とか、
「この素材を使ったもの」とかといったテーマではなく、

 

「冬に家を訪れてきた大切な人に出したい一杯」をテーマに考えた、
ストーリーのある、ちょっと毛色の違ったものを考えました♪

 
どんなものを使ったどんな味のもので、どんな風な雰囲気にしたいかな…

 
私が考えたことの中で、大きなポイントは
「人の手(温度、愛、臨場感)が感じられること」
「寒い心身に染み渡ること」です。

 

 

そんなことを考えながら、イメージを膨らましていくと、
口の中に、頭の中に、

「こんなやつを出したい!!」
という見た目と味が広がりました。


 

 

それを忠実に再現したので、

果実が皮ごと入ってたり、
濾されることなくスパイスがゴロッと入ってたり、

少々、「上品」や、
ある意味での「完成度の高い」というところからは
外れたドリンクになっています。


 

でもそれが私自身ですし(悲しいけど。笑)、
それこそが私のイメージしたドリンクなので、

敢えてその姿形を大切にして仕上げています。



そういうちょっと荒い、準備されていない、
けどとてもその瞬間の愛と想いの詰まったものとして、
全力で楽しんでもらえたらと思っています。

 

(最初に試作段階で試飲してもらった夫のたつぱーるには
「ローズマリーが口で…」と言われましたが、
私のイメージの中では、
まさにローズマリーのトゲっとした葉っぱが
口の中でもごっとしてしまうドリンクだったので、

完成品もそのままです。笑)

 

[caption id="attachment_4672" align="alignnone" width="682"]カフェケシパール_スキャン 22 ナツパールの試作とご意見番たつパールの仕事っぷり[/caption]

 

私は、育児中ということもあって、
今はほとんどお店に立ててはいませんが、

ケシパールに訪れ、好きでいてくれるお客様は
今でもこれからも、とてもとても大切な存在です。


 

私たち夫婦が生み出して、
育て、

そして今はケシメイツと一緒に成長させていっているこの空間で、

なぜだかほっと心が和み、 思わず笑顔になってしまう、

その一つのファクターになるようなドリンクになればなと思っています。
(もちろんケシパールにとっては、チーズケーキも一つのファクターにすぎません。)




 

 

 

 



ホッとグレフルジンジャーを飲みに



なつぱーる さく

 

 

 

 

日はすっかり沈み、
冬の冷たい空気と、明るい月。

フクロウの声が聞こえます。

足元には落ち葉。

歩みを進めるたびに、心地いい音楽を奏でてくれる。

 

 

「今日はいつもに増して寒いな。
雪も降ってきそうだ。
早く帰って温かい寝床で眠りたいな」

 

そんな事を思いながら、
家路を急ぎます。


 

 

森の入り口から少し入って行くと、

低い木の枝にかけられている小さなランタンの灯りが見えてきました。

 

ひとつ、ふたつ、みっつ、ぽつん、ぽつん。



「見慣れない灯りだな。」

口から漏れた言葉は、
白い息になって消えました。

 

 

 

なんとなく気になって、

温かい光が作る道をさらに奥へ進んでいくと、

大きな大きな木の根元に作られた、

小さな小さな小屋がありました。



 

「はて、こんなところにこんな家があるなんて」

 

 

入り口の小さな階段は、

落ち葉が綺麗に掃除され、

扉からはオレンジ色の光が漏れています。


 

冷え切った手をこすりながら、家までまだまだ続く森の奥を眺めました。

空から雪がふわりと落ちてきて、足の上で消えました。

 

びゅっと頰を吹き付ける風に身震いしたら、

少し暖をとらせてもらおうと、
小さな扉をノックしました。


 

トントントン

 

 

 

「あら、いらっしゃい。寒かったでしょう。」

 

扉が開くと、

白熱灯の橙色と、ムッと温かい空気がふわっと体を包み、
思わず目を閉じてしまいました。


パチパチと薪の燃える音にそっと目を開くと、
いつの間にやら暖炉の前の椅子に腰を下ろしていました。

 

来たことも、見たこともないはずのその場所は、
なぜかとても懐かしく、
温かい気持ちにさせてくれました。

 

さっきまで考えていた、この不思議なお家のことなど
どうでもよくなる程に心地よく、ぼうっと暖炉を眺めていると、

 

「どうぞ。」

 

その人間は、一杯の飲み物を手渡してきました。


 

いつもなら疑い深いキツネも、

その温かな湯気に、
なんとも言えない香りに思わず手を伸ばし、

目をつむって味わってしまうのでした。

 

そのドリンクは、


一口飲むとホッと落ち着き、

二口飲むと気分が明るくなり、

三口飲むと体が内側からポカポカしてきました。



 

キツネは夢中になり、

あっという間に飲み干してしまいました。


 

「あら、もうおしまい?」


 

その人間は、ふふと笑いながら、

飲み終わったカップにそっとお湯を注いでくれました。


 

 

「いや、この味が気に入ったから、このまま帰るよ。
ありがとう。ごちそうさま。」

 

 

キツネは、指さきまでポカポカに温まったのを感じながら、
カップをテーブルに置き、
丁寧に礼を言って席を立ちました。


 

「こちらこそ、ありがとう。またいつかどこかで。」

 

 

 

人間の声を背中に受けながら、
名残惜しいその空間の扉を押して気がつきました。

 

 
「そういえば、きちんと顔を見ていなかったな」


 

キツネがくるりと身を返したその時、


ドシン!!



いつの間にか積もった雪に、足を滑らせてしまいました。


「いてててて」


目をこすりながら立ち上がったキツネは、

自分の体がとても軽くなったことに気がつきます。

 

「すごく気分がいいぞ。まるでぐっすり眠った朝のようだ。」

 

 




 

キツネはもう一つのことに気がつきました。

そこは、階段の下ではなく、

他でもない、自分の家の寝床だったのです。



 

外を見ると、朝日が昇っています。




「夢、だったのか…」

キツネはゴシゴシと目をこすり、朝の支度を始めました。

 

出発の準備を整え、
玄関で、いつものように舌でペロリとヒゲを整えると、

ローリエの、グレープフルーツの、生姜の、

あの「懐かしい」味がしました。



 

「いつかまたどこかで」

キツネはふふと笑い、今日も出かけて行きました。

 

カフェケシパール_スキャン 21